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提供: 市谷の杜 本と活字館 大日本印刷株式会社

一〇〇年目の書体づくり

「秀英体 平成の大改刻」の記録

一〇〇年目の書体づくり――あとがき

 

秀英体は強い生命力を持った書体です。そうでなければ、これほど激しい技術革新のなかを淘汰されずに使われ続けることはできません。しかしその強さはどこから来ているのでしょうか。振り返れば「平成の大改刻」とは、DNP自らが、秀英体の強さの源泉をしっかりと学び、考え、摑んでいくプロセスそのものだったように思います。

「平成の大改刻」がどのように始まり、どのように行われてきたか、そのプロセスを広く公にすることで、日本における書体開発の過去と現在、そして未来への足掛かりを、日常生活で書体に触れるすべての方々と共有したいと考えました。本書は、最終的なデザインを示すだけでなく、フォント化までの技術的な工程や新書体開発など、2005年末から2012年までの7年にわたるプロジェクトの過程を一冊にまとめたものです。

本書に書かれているとおり、けっして容易な開発ではありませんでした。のべ12万字に及ぶ膨大な文字数と格闘し、技術的な課題を解決していくなかで、試行錯誤や意見の相違も数多くありました。もちろん反省点も残っています。しかし、新しい秀英体が日一日と姿を現していく喜びがつねにありました。利用者からの期待の声や、100年の歴史、「秀英体」という名前の重さは、けっして軛ではなく、「過去に恥じない開発を」というモチベーションの原動力でした。そしてなにより、自分たちがつくる秀英体がどれほど素晴らしい書体なのか、深く実感できる貴重な時間でした。

古今東西、どの名作書体であっても、文字を定着させる彫刻・印刷・表示技術を無視して、その書体を評価することはできません。デザインは技術的な制約のもとに行われるからです。だからこそ人の心に訴える書体は、いく度もリバイバルされ、それぞれの時代を彩ってきました。細部を洗いなおし、新たな解釈のもとに最適なエレメントを見出し、再び世に問う。そうしてつねに改刻され、使われ続けることでしか、書体は生きることができないのです。それは秀英体も例外ではありません。

歴史を振り返ると、技術革新とともに、秀英舎・DNPでは、10~20年おきに秀英体の改刻と新規開発を行ってきました。技術の節目には必ず、秀英体を次の時代の技術へ橋渡しをした開発者と、企業理念の継承をふまえた経営陣の判断がありました。そして「平成の大改刻」もまた、これからの100年に向けて秀英体をつなぐ一歩になったと感じています。

今回開発にたずさわったメンバーが100年後の秀英体を見ることは叶いませんが、秀英明朝ファミリー、秀英初号明朝、秀英角ゴシック金・銀、そして秀英丸ゴシックが、それぞれの魅力を発揮しながら、使われ続けていることを願ってやみません。

一冊の本の裏側に、目の前の画面の向こう側に、書体をつくっている開発者たちがいます。書体の美しさに触れたとき、それを思い出してください。本書がそのきっかけになれば幸いです。

2013年9月 大日本印刷株式会社 秀英体開発室