秀英体のコネタ
2005年03月04日
第3回 3万個の愛と笑い
作品について
イチハラヒロコ「愛と笑いの日々。」 2004年
motアニュアル2005 愛と孤独、そして笑い/東京都現代美術館
mot アニュアル2005 愛と孤独、そして笑い
2005年1月15日(土)~3月21日(月・祝) 東京都現代美術館
出品作家
イケムラレイコ/ 出光真子/ イチハラヒロコ/ 岡田裕子/ オノデラユキ/
鴻池朋子/ 澤田知子/ 嶋田美子/ 溝口彰子O.I.C./ 綿引展子
展覧会カタログの表紙にも「愛と笑いの日々。」が使われています
カタログ表紙撮影:豊浦英明
東京都現代美術館で2005年1月15日(土)~3月21日(月・祝)まで開催されている企画展・motアニュアル2005「愛と孤独、そして笑い」に、現代美術家のイチハラヒロコさんが「愛と笑いの日々。」というタイトルで、金属活字を使った作品を出品しています。
イチハラさんといえば、ことばをモリサワゴシックMB101という太いゴシック体で印字したインスタレーションで知られます。「万引きするで。」と印刷されたショッピングバッグ、大阪府・布忍神社の恋みくじ、心斎橋そごう工事の仮囲いなど、実際に作品を目にしたことのある人も多いのではないでしょうか。
西向きの展示室の窓際に金属活字の作品「愛と笑いの日々。」はありました。
活字が山のように積まれています。
活字が積まれています
鉛色に光を反射するその山は、さほど大きくはありません。間近に寄ると、その一本一本が、「愛」「笑」という2文字が積み重ねられた山であることに気づきます。その総数は31025個にものぼります。
間近に寄るとぜんぶ「愛」と「笑」(クリックすると大きな写真が表示されます)
上から見てもぜんぶ「愛」と「笑」(クリックすると大きな写真が表示されます)
「愛と笑いの日々。」で使用された3万個の活字は、昨年、大日本印刷市谷工場にある活字鋳造機で鋳込まれました。
「愛と笑いの日々。」を鋳込んだ鋳造機
実際に活字を鋳込んだ鋳造機は小池製作所の活字鋳造機です。この鋳造機は昭和45年(1970)に導入しました。
残っていた「愛」
鋳造機のレールには、鋳込まれた「愛」の活字が何本か残っていました。
「愛と笑いの日々。」と題された31025個の活字。その1本を1日に換算すると、実に85年です。活字の山がちょうど、誰かが生まれてから亡くなるまでの「日々」のように見えました。
気軽に持ち歩く文庫本でさえ、1ページ当たり数百本、本一冊分にすると数万本の活字が必要になります。辞書に至っては、どのぐらいの活字の山になるのでしょうか。
イチハラヒロコ「愛と笑いの日々。」
ちなみに、晴れた日の夕方に行くと、大きな窓から西日が射しこみ、3万個の活字がきらきらと光ってとてもきれいです。おすすめです。
(2005.3.4 佐々木)