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提供: 市谷の杜 本と活字館 / 大日本印刷株式会社

 

秀英体のコネタ

2005年03月16日

 

第4回 活版印刷の文字セット~袖・大出張編~

 

文選作業は原稿を手に、ウマと呼ばれる活字棚の前に立ち、文字を一本一本拾っていきます。活字棚は大抵複数のケースで構成されています。ケースには使用頻度に応じて名前がついています。最も使用頻度が高い文字群のケースは「大出張」、次いで「出張」「小出張」「外字」の順に使用頻度が小さくなります。また、元号や漢数字、または「都道府県」など住所に使う文字はさらに分けて「袖」というケースに収められます。

ここまでは印刷やタイポグラフィの本に、基礎的な知識としてたくさん記してあります。しかし、実際にどういう文字がどのケースに入っているか、つまり金属活字の文字セットがどうなっているかまでは、あまり語られてきませんでした。そこで、大日本印刷市谷工場の金属活字のうち、本文用によく使用されていた9ポイント明朝の文字セットをご紹介します。

この9ポイント明朝の活字棚で、大出張・出張・小出張などそれぞれのケースがどのように配置されているかは、松田哲夫著・内澤旬子イラスト『印刷に恋して』(Amazon/honto)の32ページに内澤旬子さんによる詳細なイラストが掲載されています。この本取材時は1997年ですが、本に掲載されているイラストと現在保管されている活字棚を比較したところ、変化はありませんでした。*1

今回ご紹介するのは「袖」「大出張」の2ケースです。

  • ※出張・小出張は次回に続きます!

袖

「袖」には、元号・住所に使用される漢字・仮名の濁音などが収められています。今回は漢字だけを調査しました。

No. 文字 第一水準 第二水準 常用漢字 DNP字形
1 一 ○   ○  
2 二 ○   ○  
3 三 ○   ○  
4 四 ○   ○  
5 五 ○   ○  
6 六 ○   ○  
7 七 ○   ○  
8 八 ○   ○  
9 九 ○   ○  
10 十 ○   ○  
11 〇        
12 百 ○   ○  
13 千 ○   ○  
14 万 ○   ○  
15 銭 ○   ○  
16 廿 ○      
17 卅   ○    
18 壱 ○   ○  
19 弐 ○   ○  
20 参 ○   ○  
21 拾 ○   ○  
22 節 ○   ○  
23 頁 ○      
24 項 ○   ○  
25 章 ○   ○  
26 厘 ○   ○  
27 毛 ○   ○  
28 編 ○   ○  
29 篇 ○      
30 郵 ○   ○  
31 税 ○   ○  
32 昭 ○   ○  
33 和 ○   ○  
34 大 ○   ○  
35 正 ○   ○  
36 明 ○   ○  
37 治 ○   ○  
38 年 ○   ○  
39 月 ○   ○  
40 日 ○   ○  
41 第 ○   ○  
42 等 ○   ○  
43 条 ○   ○  
44 号 ○   ○  
45 東 ○   ○  
46 京 ○   ○  
47 都 ○   ○  
48 市 ○   ○  
49 府 ○   ○  
50 県 ○   ○  
51 区 ○   ○  
52 郡 ○   ○  
53 町 ○   ○  
54 村 ○   ○  
55 丁 ○   ○  
56 番 ○   ○  
57 円 ○   ○  
58 金 ○   ○  
59 目 ○   ○  
60 地 ○   ○  
計   58件 1件 55件 0件

袖ケース文字表

文字だけをまとめると、

一二三四五六七八九十〇百千万銭廿卅壱弐参拾節頁項章厘毛編篇郵税昭和大正明治年月日第等条号東京都市府県区郡町村丁番円金目地

袖の文字のテキストデータはこちら袖の文字のテキストデータ

袖ケースの漢字は合計60文字です。大半が常用漢字内の文字です。
表11番の漢数字のゼロ「〇」(JIS:x213b)は、JISでは記号のエリアにマッピングされていますが、金属活字では漢字として袖に収められています。

袖の文字はどれも文章の本文だけでなく、表組みや柱・ノンブル・奥付、あるいは名簿などに用いられる文字です。使用頻度というより、使用用途が他と異なる漢字を収めたケースが袖であることがわかります。「昭和」や「東京」と単語になるように、隣り合って並んでいるのも効率的です。

これとは別に、単語セットで収めるためのケースもあります。それは「連字」と呼ばれ、「結婚」という語であれば「結」と「婚」の列が並ぶのでなく、「結婚結婚結婚」と単語でケースに収められ、2本一緒に拾います。

連字の写真
連字ケースの「考え」の列の写真。「考」と「え」がひとつの列に一緒に入っています。

「考」という漢字は通常、出張3番のケースに収められています。「え」はもちろん仮名のケースです。

連字ケースは、その活字サイズが主に使用される品目で使用頻度の高い文字なども収納されており、活字サイズの違いで、内容がかなり異なります。ずいぶんフレキシブルなケースとして使われていたようです。

ところで、「東京」が袖に入っているのは、単純に東京という単語の使用頻度が高いからでしょうか。それとも大日本印刷が東京都の印刷会社だからでしょうか。どちらともありえる理由ですが、例えば名古屋の印刷会社なら、袖には「愛知」「名古屋」が入るのでしょうか。全国の活版印刷所の情報をお待ちしております。メールはこちらです。

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大出張

「大出張」には、最も使用頻度の高い文字群が収められます。

No. 文字 第一水準 第二水準 常用漢字 DNP字形
1 上 ○   ○  
2 下 ○   ○  
3 不 ○   ○  
4 中 ○   ○  
5 之 ○      
6 主 ○   ○  
7 事 ○   ○  
8 云 ○      
9 人 ○   ○  
10 今 ○   ○  
11 以 ○   ○  
12 何 ○   ○  
13 来 ○   ○  
14 其 ○      
15 入 ○   ○  
16 内 ○   ○  
17 全 ○   ○  
18 出 ○   ○  
19 分 ○   ○  
20 前 ○   ○  
21 化 ○   ○  
22 又 ○   ○  
23 及 ○   ○  
24 合 ○   ○  
25 名 ○   ○  
26 同 ○   ○  
27 国 ○   ○  
28 場 ○   ○  
29 外 ○   ○  
30 多 ○   ○  
31 女 ○   ○  
32 如 ○   ○  
33 子 ○   ○  
34 学 ○   ○  
35 定 ○   ○  
36 家 ○   ○  
37 実 ○   ○  
38 対 ○   ○  
39 小 ○   ○  
40 少 ○   ○  
41 居 ○   ○  
42 度 ○   ○  
43 彼 ○   ○  
44 得 ○   ○  
45 後 ○   ○  
46 御 ○   ○  
47 心 ○   ○  
48 思 ○   ○  
49 性 ○   ○  
50 意 ○   ○  
51 成 ○   ○  
52 我 ○   ○  
53 或 ○      
54 所 ○   ○  
55 故 ○   ○  
56 政 ○   ○  
57 教 ○   ○  
58 数 ○   ○  
59 文 ○   ○  
60 方 ○   ○  
61 於 ○      
62 新 ○   ○  
63 時 ○   ○  
64 書 ○   ○  
65 最 ○   ○  
66 会 ○   ○  
67 有 ○   ○  
68 本 ○   ○  
69 業 ○   ○  
70 此 ○      
71 民 ○   ○  
72 気 ○   ○  
73 法 ○   ○  
74 活 ○   ○  
75 無 ○   ○  
76 然 ○   ○  
77 為 ○   ○  
78 物 ○   ○  
79 現 ○   ○  
80 理 ○   ○  
81 生 ○   ○  
82 産 ○   ○  
83 用 ○   ○  
84 田 ○   ○  
85 当 ○   ○  
86 発 ○   ○  
87 的 ○   ○  
88 相 ○   ○  
89 知 ○   ○  
90 社 ○   ○  
91 私 ○   ○  
92 立 ○   ○  
93 組 ○   ○  
94 経 ○   ○  
95 義 ○   ○  
96 者 ○   ○  
97 育 ○   ○  
98 自 ○   ○  
99 至 ○   ○  
100 行 ○   ○  
101 要 ○   ○  
102 見 ○   ○  
103 言 ○   ○  
104 記 ○   ○  
105 説 ○   ○  
106 論 ○   ○  
107 議 ○   ○  
108 通 ○   ○  
109 道 ○   ○  
110 部 ○   ○  
111 重 ○   ○  
112 長 ○   ○  
113 間 ○   ○  
114 関 ○   ○  
115 体 ○   ○  
116 高 ○   ○  
117 点 ○   ○  
合計   117件 0件 111件 0件

大出張ケース文字表

文字だけをまとめると、

上下不中之主事云人今以何来其入内全出分前化又及合名同国場外多女如子学定家実対小少居度彼得後御心思性意成我或所故政教数文方於新時書最会有本業此民気法活無然為物現理生産用田当発的相知社私立組経義者育自至行要見言記説論議通道部重長間関体高点

大出張の文字のテキストデータはこちら大出張の文字のテキストデータ

使用頻度が高いだけあって、すべてJIS第一水準の範囲内の文字です。

ひとつのケースは、縦に3段に分かれています。大出張は1ケースだけですから117字でおしまいです。常用漢字ですら1945字、小学生の間に習う教育漢字ですら1006字あることを考えると、ずいぶん絞り込まれています。長年の経験と知識の結晶です。

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出張・小出張に収録される文字の紹介は、次回につづきます!

(2005.3.16 佐々木)

  • *1 『季刊 本とコンピュータ』1997年秋号(第2号)(Amazon)の113ページにも同じイラストが掲載されています。