秀英体のコネタ
2005年09月27日
第12回 ピンマーク!ピンマーク!
「ピンマーク/Pin-mark」をご存知でしょうか。
金属活字の側面にある、鋳造会社をしめすマークのことです。
現在DNP市谷工場にある鋳造機はピンマークはつきません。そのためウマに収納してある和文活字でピンマークのついたものを見かけたことはありません。しかし、母型庫の一角には非常に古い欧文活字が残されており、ここにピンマークのついた活字がありました。
この古い欧文活字は大型であるか凝った意匠の書体のため、使用頻度が少なく、母型ではなく活字を残したのではないかと考えられます。そして秀英舎以外の印刷会社のピンマークもいくつか発見されました。暗い母型庫の奥でひとり、古くて取っ手の外れかけた活字たんすを手当たり次第に開けたり閉めたり、並ぶ活字を手当たり次第にひっくり返してようやくかわいらしいピンマークが現れると、ちょっとした宝探し気分です。
それでは、発見されたピンマーク活字をご紹介します。
秀英舎
まずは秀英舎のピンマークです。書体は「バンハードメヂウム/Bernhard Gothic Medium」36ptです。
ひとつは秀英舎の社章、社名の反切から誕生した「生に丸」印です。
続いて同じく「バンハードメヂウム」の36ptにあったピンマークですが、こちらは「東京秀英舎」とあります。
ピンマークに使われている書体がかわいらしいです。
次は「カレンダー用数字」と記された棚にあったピンマークです。「東京秀英舎」と横一列に並んでいます。
うまく鋳造ができなかったのか、ピンマーク自体はとてもうっすらとしか刻まれていません。しかしこの横一列の秀英舎ピンマークはこの他には見つかりませんでした。
こちらは「ニュースタイルゴシック/NEW STYLE GOTHIC」の26pt程度の大きさの活字棚に入っていた秀英舎のピンマークです。前出のものと比べると「東京」が抜けています。かわりに活字サイズを示していると思われる「26」という数字があります。
「ニュースタイルゴシック」はネッキが2本です。
これはオーナメント活字のピンマーク、『秀英体研究』の136ページに掲載されている写真と同じものです。ピンマークだけでも縦横に大きさがありますから、大型活字の鋳型についていたマークなのでしょうか。
東京築地活版製造所
築地体でおなじみ、平野富二の東京築地活版製造所のピンマークもありました。パックマンのような丸の中に平野の「H」が入った東京築地活版の社章がそのままピンマークになっています。
「デバインコンデンス/DE VINNE CONDENSED」の36ptについていました。
海外のピンマーク
海外の会社のピンマークも少しですが見つかりました。
イギリスのFIGGINSのピンマークです。シンプル。
先ほど登場した秀英舎のピンマーク同様「ニュースタイルゴシック/NEW STYLE GOTHIC」の26ptについていました。
アメリカのCONNER & SONSのピンマークです。こちらもシンプルに丸の中に「CONNER」とだけあります。
「レターNo.5」の36ptについていました。
もうひとつもアメリカのCONNER & SONSのピンマークです。先のものと丸は共通ですが、「CONNER &SONS Type FOUNDERS」「NEW YORK」と小さな文字がみっしり。
「エジプシャン/EGYPTIAN」の48ptについていました。
秀英舎の?ピンマーク
おそらく秀英舎のピンマークと思われるものを発見しました。丸にサンセリフ体で「S」の意匠です。SHUEISYAかSEIBUNDOか、いずれにせよ弊社のピンマークではないかと思っていますが、同じピンマークが紹介された資料を見つけることができませんでした。
類似する丸に「S」のピンマークとして、藤井三太夫の藤井活版製造所のピンマークがあります。嘉瑞工房のサイト「嘉瑞工房のお宝」に写真が掲載されています。藤井活版のピンマークは丸にローマン体で「S」です。上の写真はサンセリフの「S」。さて、関係があるのか、ないのか……。
この秀英舎らしい(と担当者は思っている)ピンマークについて情報をお持ちの方がおいででしたら、ぜひ御連絡ください。お待ちしております!
(2005.9.27 佐々木)
協力:朗文堂