秀英体のコネタ
2011年12月27日
第32回 秀英体100イヤーを大日本タイポ組合と振り返る年末大日本放談
大日本タイポ組合
http://dainippon.type.org/
秀親さんと塚田哲也さんの2人で1993年に結成。日本語やアルファベットなどの文字を解体し、組合せ、再構築することによって、新しい文字の概念を探る実験的タイポグラフィ集団。ロンドン、東京での個展、バルセロナや東京での企画展に参加。2003年には、バルセロナ(スペイン)で設立10周年記念の展示会を開催し、同時に作品集「TYPE
CARD PLAY BOOK」も出版。
永井先生にお見せした作品集は、誠文堂新光社から絶賛発売中の『大日本字』、大日本タイポ組合のこれまでの制作の足跡を一気にまとめたこれを読めばあなたも大日本通です。
記事の最後でお知らせしているように、2012年2月からは日本科学未来館で「字作字演」展も開催です。
急に寒さ厳しくなってまいりました、年末ですね。
ここ数年、年末にしか更新されない秀英体のコネタですが、今年はなんといっても生誕100年目の秀英体、全国3ヶ所に巡回した展覧会「秀英体100」をはじめ、社内外で幅広く秀英体をご紹介できた一年でした。
そこで今回は、秀英体100展の展覧会ポスターのみならず展示デザインもして下さった、大日本タイポ組合の秀親さんと塚田哲也さんにご登場いただきました。ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)で秀英体100展を担当した高木美歩さんと秀英体開発室の佐々木の4名で、年末大日本放談をお届けいたします。
大日本タイポ組合の秀親さんと塚田哲也さん。秀英体展示室の活字ベンチで記念撮影!
塚田:えー、みなさん、おつかれさまでした。
一同:おつかれさまでした
――きょうは2011年の秀英体生誕100年を振り返るということで、告知物のみならず準備から深く関わっていただいた大日本タイポ組合のおふたりに、展覧会についてお話を伺おうと思っています。
秀英体100前夜
――まずは、おふたりに依頼をする前段階から。高木さんにお伺いしたいのですが、gggの中で毎月の展覧会の企画は、どういうタイミングであがってくるんですか?
高木:いまの段階で2012年度の展覧会がほぼ決定しているので、秀英体100展に関しては2009年の年末ごろには開催は決まってましたね。
塚田:1年前から動き出すなんて、こんなロングスパンの展示準備は、gggではよくあるんですか?
高木:だいたいの展示は、半年ほど前から動きはじめて、具体的な作業は3ヶ月くらいからが多いので、秀英体展は準備が長かったですね。新作ポスターを作るというのがありましたしね。
――gggでは「秀英体の展示なんてアリなの?」という反応はなかったんですか。
高木:それはなかったんだけど「どういう展示にする?博物館的なこと?でもそういうことじゃないよね」と、具体的な展示イメージを想像できないなあという悩みはありました。
――それで2009年末に秀英体開発室にもお話を頂いて、年明けにキックオフミーティングをしましょうということで、関係各部署が集まりました。その段階で、うちの室で出した下案の資料を持ってきました。
塚田:ちゃんとパースが描いてある!
秀親:これ早く見せてくれればよかったのに(笑)。
塚田:ほんとだよ。
――で、このときは秀英体開発室側の勝手な案でしたが、実はおふたりだけが一番最初から案に名前が入っていました。
下案を見るとおふたりの名前が……
塚田:うわ、ほんとだ。
秀親:びっくりした。
――結果的におふたりには最後まで深く関わって頂いて、本当に感謝なんです。
塚田:新作ポスターはやらなかったけどねえ(笑)。
秀親:他の人の名前はないのに。
塚田:なんで? そこが聞きたいわ。大日本だから?(笑)。
――せっかくの展覧会だから新作ポスターを1枚くらいは作ってもらいたいなあと思ったんですね。で、新しくリニューアルしたことだし、意外な方たちにお願いしたいなと。大日本タイポ組合さんといえば文字だけど、秀英体っぽくはない、ということで提案していたんです。それが結果的にはなんと、展覧会では新作ポスターの作者が24名+1組になりました。
高木:展覧会に参加してくださった新作ポスターの24名+1組は、監修者である永井一正先生に候補のデザイナーさんたちを選んでいただいてます。その席で、展覧会の告知ポスターと展示デザインをお願いするのは大日本タイポ組合さん、というのも決まりました。
塚田:高木さんから話がくる前に、渋谷のアップルストアでAdobeの西塚涼子さんと「文字Talk 1.0」をやったときに、みんなで夕ご飯を食べに行ったんです。そこで佐々木さんとはじめてお会いしまして「秀英体展よろしくお願いします」って言われて、え、何それ、ってなったんです。その数日後、gggに展示を見に行ったときかな、高木さんからこのお話があったんです。
――大日本タイポ組合さんは文字にまつわるお仕事をたくさんされているとは思いますが、依頼があってどう思われました? 秀英体はわりと地味な書体なので、断られたらやだなと思っていたので……。
秀親:基本断らないからね(笑)。
――あ、秀英体って知ってました?
秀親:ガムテープ貼ってあるやつ?(笑)(*1)
――響きは似てるけど違います!
塚田:自分たちは秀英体的な流れからすると外れていて、しかもやっぱりよく知らなかったです。でも展覧会のポスターを依頼されたときに「エンターテイメントでお願いします」と言われたので、それのみを念頭においてました。
高木:永井先生からも「文字というテーマは地味だし秀英体はさらに硬いので、楽しい展覧会デザインにできるような人にお願いしなさい」と言われていました。それで大日本タイポ組合さんの作品をお持ちして永井先生に見て頂いたところ、文字をテーマにした仕事をしているし、遊び心がある若い方たちでいいね、ということでした。
塚田:でもいまはばっちりですよ。
高木:新作ポスターに参加して下さった皆さんに依頼をしたときに「必要があれば秀英体の詳しい説明に伺います」とお話したところ、かなりのデザイナーさんが「説明に来てください」ということで、佐々木さんと一緒にあちこちおじゃましましたよね。
――行きました! 展覧会の後になっても、引き続き使ってくださっている方も多く、本当にうれしいです。
塚田:いくらいい書体だって、使えるようにならないと使わないでしょ? だからいいきっかけだったんだよ。
秀親:最近、秀英体が使われてるのを見るのが増えてきましたものね。
――おふたりもよく使ってくださっていて、ありがとうございます。
秋は展示準備の季節
――そんなこんなで9月になると、急遽、ロゴを永井先生が作って下さいまして。
秀親:贅沢だよねえ。
高木:もともとは何種類かあったんですが、その中から永井先生一押しのあのロゴを選んで、四季をテーマにした新作ポスターに共通で入れてください、ということになりました。
designed by Kazumasa Nagai
――大阪巡回も決定したので新作のメンバーに大阪4名、また、海外勢ということでコントラプンクトが加わりました。
塚田:展示会場も、最初は中央の柱とか案になかったですよね。
――最初の展示図面の段階ではまだ20名で、柱はなかった状態でしたね。その後追加メンバー含め、図面を書き直してもらいました。
秀親:で、柱を立てるなら、地下にも突き抜けたほうがいいと(笑)。
塚田:そうそうそうそう(笑)。
柱と見せかけてB1Fから見るとそれは巨大な活字だった!(予算の都合上実現しませんでした)
――展覧会の準備をしていく中で、わりと造作に関わる部分を変えていったなあと思っていたのですが、gggの他の展示と比べてどうなんですか?
高木:いつもの展示はもっとプランが変わります(笑)。
――もっとやってよかったんだ(笑)。
高木:1Fはあまり動かなかったじゃないですか。柱が増えたくらいですし。B1Fも、大きな経師(*2)をやるとかそれくらいでしたしね。
秀親:戦前の新聞広告は大変だった。リベンジは大阪でと思ったら、大阪も微妙にパネルの位置が図面と合わなくて、最後は福島までひっぱっちゃった。
一同:ああ~。
秀親さんが翻弄された戦前の新聞広告パネル。銀座の設営では二日がかりでした……
グリッドで活字を表現
――11月に入ると、怒涛の入稿がはじまるのですが……。
塚田:告知物関連はオンタイムだったでしょ。年内に配ったりしないといけなかったから。
高木:ほぼスケジュール通りでした。打ち合わせ中に初校があがってきたりして、みんなで見ましたよね。
蛍光ピンクの色の転び、細い罫線の見当、ニスの厚みなど細かくチェック!
――告知物は、グリッドで構成したデザインが印象的ですが、プランはスムーズに決まったんですか?
秀親:方針は決まってました。俺すごく一生懸命いろんな罫線を組み合わせて「秀英体」って読ませるパーツを作ったんだけど、てっちゃんが「こういうのじゃないんだよ、漢字とかのパーツ組み合わせたほうをいっぱい作ってくれよ」とか言ってきて。
漢字、仮名、アルファベットや数字、罫線、文字のパーツ、
写植、活字など、様々に構成された「秀英体100」
designed
by Dainippon Type Organization
塚田:ちょっとまじめな話をするとですね、2008年にラフォーレミュージアムで開かれたHelvetica展に僕らも参加してポスターを出したりしたんです。僕たちは今まで、書体を切ったり伸ばしたり足したりばかりしていたんですけど、そういうことをするとヘルベチカの偽物になっちゃうと気づきまして。さらに秀英体は、新しく改刻もしたし、書体の美しさも見せないといけないから、書体をいじるわけにはいかないんですよ。しかられるんですよ。
――しかります(笑)。
塚田:で、どうしようというときに、打ち合わせで作った字をバーっと見せてもらったり、展示でも壁に秀英初号の改刻前後を全字を出しましょうねという案がありましたよね。とにかく作った字をたくさん見てもらいたいと。そこで、チラシにもいっぱい秀英体の字がでてきたらいいな、という思いがありました。グリッドじゃなく、いっぱい文字を重ねた案もあったんだよね。
秀親:そうそう。
塚田:だけど秀英体は活版のころからある書体なんだから、やっぱりグリッドで構成して「活字を組む」というイメージにしましょうと。で、罫線を使って「秀英体」に見える字を作るのはわりと簡単だし、罫線も秀英体のフォントに入っているからいいんだけれど、やっぱりこういう漢字とか仮名とか記号とかうまく使って、ギャル文字のように秀英体の形を見せられたらいいなと思って、ひっぱりだしてきた、という感じ。
――印刷物では原稿に入ってこない字は使われませんから、フォントの中には、作ったけど誰ひとり使わない可能性があるよな……という字がかなり含まれているんですね。実際、このポスターで初めて使われた字がたくさんありました。
塚田:どの字か忘れたけど、佐々木さんに見せたら、「うわーこの字がポスターに載っちゃってる恥ずかしいー!」とか言ってましたよ。
一同:笑
――初号の半角仮名とか、ギリシャ文字とか、普通の文章だとまず使わないのでびっくりしました~!
蛍光ピンクの衝撃
――初校があがってきたときに、1部高木さんから頂いて帰って、室の他のみんなに見せたんですが、男性たちはこの蛍光ピンクに衝撃を受けていたリアクションが多く、女性からは評判がよかったんですね。なんでピンクにしたんですか?
塚田:女子に評判がいいかと思って(笑)。
秀親:まあお正月だし、とにかく楽しい雰囲気にしたかったから。エンターテインメント担当なんで。
塚田:あとはありえない感じ。意外性ですよ。このポスターにも使ってますが、秀英体はついつい活字のシルバーっぽい感じになっちゃうんですよ。古めかしいオーソドックスなね。それを打破するために蛍光ピンクしかなかったですよ。あとはツルツルのミラーコート紙に刷るとかね。そのへんでがんばって派手めにしておこうと。
秀親:金属活字の写真のところ、シルバーの上にスミ網とマットニスのせて、鉛っぽく見えたっていうのがよかったよね。
塚田:展覧会のオープニングパーティのときに中島英樹さんが「あれさ、銀にスミ、のせたの?」って訊いてきて。ニスとスミ網のかけあわせで結構活字っぽく出るねえ、と中島さんに言われたのはうれしかったな。
秀親:これはPDのナベさん(*3)との打ち合わせで、こうしたらいいんじゃないの? と提案をもらったんですよ。
塚田:入稿前にナベさんたちと打ち合わせしたときには、スミ+シルバー+蛍光ピンク+ミラーコート、という案は考えていたんです。でもその席で、ミラーコート紙の上に蛍光ピンクを刷ると定着が悪いから、ニスをひかないとだめだろう、という話になったんです。やり方としては「マットな紙にグロスニス」というパターンと、「ツルツルの紙にマットニス」の2パターン検討しました。ナベさんと話していく中で、ミラーコート紙のツルツル感はニスでは再現できないから、後者にしたほうがいいですよ、と教えてもらったんです。
――なるほどー。
塚田:ニスは1版でいったんだっけ?
秀親:1版。濃度は変えてるけどね。
塚田:そうだ、ニスのパーセンテージ変えられますよ、という話をきいて、あわてて色々な濃度でニス版を作成したんでした。全面にニスをひいてもつまらないし、ニス版でも遊べないかと考えながら。
表も裏も文字だらけ
高木:チラシの裏とかもすごく大変だったと思うんです。ビジュアル(写真図版など)がまったくなくて。
秀親・塚田:そうそう!高木:gggのチラシで裏にビジュアルがまったく入らない、というのはあまりないので、どうやってデザインするんだろうな、と楽しみだったけど、内心かなりどきどきしてました。
塚田:ただ幸い、この書体を見せる、っていうのがあったから、それに徹することができた。
――告知物の制作段階では、掲載できるビジュアルが永井先生のポスターしかなかったんですよね。
高木:新作ポスター、半分くらいのデザイナーさんがまだ入稿してなかったんです(笑)。
秀親:チラシをつくるときに「何人かのポスターができあがってきて、はめ込んだりできるんですよね?」って聞いたら、「絶対無理です!」って高木さんに怒られたもん(笑)。
一同:笑
塚田:このチラシは、ちゃんと書体の見本になって、地図も文字でできている、っていうのはやってよかったですね。
秀親:よかったよねー。
塚田:これをやったために、地図の呪縛が、大阪とCCGAで大変なことに。
高木:大阪は2会場あるし、CCGAは空港とか川とか最寄り駅とか、力作でしたね(笑)。
CCGA(上)と大阪の地図。フォントの中にある図形を行間字間ベタで並べて地図にしています。
CCGAが空港あり川あり高速道路あり新幹線と東北本線と水郡線ありで泣きそうでした。
――史上初、表も裏も文字だらけというチラシで。
高木:文字校正が大変でしたものね。
秀親:このテキストのグリッドがなければごまかすのがどんだけ楽だったか(笑)。
塚田:色校正の回数とか版数とかは、告知ポスターが一番おとなしかったね(笑)。
一同:笑
秀親:でも3会場分作ったからね(笑)。
塚田:高木さんが「大阪巡回では、チラシとB2ポスターは色を変えられますよ」とか言うから蛍光グリーンにしたら、やっぱりB全ポスターも色を変えたくなって……。
――B全ポスターは、そもそも3会場共通で、会場別には作り直さない予定でしたから……。
秀親:dddギャラリーとCCGAをどうやって説き伏せるかが課題で(笑)。
塚田:「B全を刷ったほうがいいですよ」とかね、みんなで言ってたよね。
高木:「展示で3点並べますから作ってください!」とか言いましたね(笑)。
3会場分作ったB全ポスター。CCGAの巡回では並べて展示しました。
塚田:ポスターの文字がいろいろ並んでいる部分を、各会場で変えて組むとなおよかったなと思ったんですけど、ニス版とかも全部やりなおしになるから、くじけちゃったんです。
――おふたりには展示の構成にも深く入っていただいたので、意外に、東京から大阪の間で時間がなかったんですよね。
塚田:そうだ、大阪の会場下見とか行かないといけなかったしね。
秀親:それカレーうどん食べたときでしょ? 俺だけ行けなかったんだよ。
一同:笑
――おいしかったですよねえ。
やれなかったこと、やってよかったこと
――やれなくて残念だったという話をしておこうかと。
秀親:アルポリ!(*4)
高木:やっぱりふつうのパネルだと反ったり角が曲がったりして傷んじゃうから、3会場巡回することを考えると、アルポリのほうが強度はよかったんですよね。
――予算の都合上、活字ベンチを作るか、新作ポスター25枚のパネルをアルポリにするかという激しい戦いがあり、結果的に活字ベンチが競り勝ちました。
塚田:活字ベンチはよかったねえ~。
秀親:うん。よかったね。
塚田:俺は何度も言ってるように、活字ベンチさえできれば、他はどうでもよかったから(笑)。
みんな大好き活字ベンチ。ネッキまでしっかり作りましたよ。
©Photo by
Mitsumasa Fujitsuka
――活字ベンチは展示終了後、おふたりの事務所と五反田の秀英体展示室にて活用されてますし、やってよかったですね。
塚田:みんな褒めてくれたよ。
高木:空間に合ってましたよね。
塚田:しかも非常に費用対効果よかったですよね。
秀親:活字ベンチ、特注品なのに、あんまり高くなかったんだよね。
――塗装もよかったので、照明をビシッと当てると、結構活字に見えたんですよね。
塚田:1Fはポスターを並べるのであまり付け加えられないのはわかっていたんですけど、地下の展示室も結果的にすんごい量の展示物が詰め込まれましたよね。
――だってもう二度とこんな機会ないかもしれないから、何でも展示しようと思って。
塚田:大量の展示物を埋めていったらけっこう埋まっちゃって、どうしようどうしようと考えて、あのベンチを思いついたんでね。エンターテインメント担当としてはよかったですよ。
秀親:カッティングシートは寒さで貼るのに苦労してたけどね。
――でも秀親さんの厳しいチェックで、いい仕上がりになりました。
塚田:あとはね、外のバナーも真っピンクになってよかったよね。
高木:バナーを下げたら、一気に通りが華やかになりましたよ。
塚田:いま、杉浦さんのバナーが真似してるでしょ?(笑)。
高木:そうですね、ピンクですね(笑)。
2011年のgggははからずもピンクに始まりピンクに終わりました。
©Photo by
Mitsumasa Fujitsuka
秀親:あとはほら、史上初の2Fに上がる階段に展示とか。
塚田:勝手にやる人多すぎだな!
秀親:あと2枚作ってくれた人(*5)とか!
一同:笑
塚田:まあでも、暴れて欲しいな、秀英体には。(*6)
高木:大阪の2会場同時開催も初でした。
――大阪ではモリサワのみなさんの全面協力を頂きました。そして杉浦康平さんの特別講演会というイベントが開催できました。
高木:あれは実現できてすごかったですね。
塚田:大阪が一番開催が危ぶまれたものね。
――そうですね。大阪は3月22日スタートでしたので、東日本大震災の翌週には設営という状況で、いろいろなイベントが全国で中止が相次いでいたので、もしかしたら、と思っていましたが、なんとか開催できました。また、CCGAは設備に大きな被害がありましたが、5月末までに修理が間に合いました。来館者数は少なめでしたが、ゆっくりご覧になったお客様が多かったと聞いています。
――2010年の8月に依頼をして、CCGA展示終了が2011年9月でしたので、丸一年お付き合い頂いた秀英体でしたが、いかがでしたか?
塚田:ほんとに、やりのこしたことばっかだな。
――秀英体200への布石が……。
塚田:やってみてわかることだらけですよ。これだけの規模の展示をやるのも初めてでしたしね。
秀親:じゃあこのスケジュールをもう一回やればいいのね。
――それはまた秀英体200のときによろしくお願いいたします。本日はありがとうございました!
そんなこんなで秀英体100は大団円を迎えましたが、年が明けたら2月から日本科学未来館で大日本タイポ組合さんの展示が始まりますよ! テーマはもちろん文字ですが、アルゴリズムで文字を作るってどういうことなんでしょう? ぜひお楽しみに!
@メディアラボ(miraikan)第10期展覧会
「字作字演」Design Letter Yourself, with Algorithmic Thinking!
大日本タイポ組合∩古堅まさひこ
今、あなたが読んでいる「これ」は何でしょう?
そう、「文字」です。わたしたちは文字を使っていろいろなコミュニケーションを行っています。この「文字」を文字たらしめるものは何なのでしょうか?第10期メディアラボ展覧会「字作字演」では、形を組み合わせたり分解したり、拡大したり回転したりと様々な「アルゴリズム=演算」で文字を作ります。ひとつひとつ個性の違った文字たちと一緒に「字作字演」を楽しみましょう!
会 期:2012年2月1日(水)-6月25日(月)
会 場:日本科学未来館
3F常設展示フロア内メディアラボ
開館時間:10:00-17:00 (入館は閉館30分前まで)
休館日 :火曜日(ただし3/20-4/3の火曜日は開館)
料 金:常設展示料金でご覧いただけます。
主 催:日本科学未来館
あっという間の2011年、さまざまなかたちで秀英体をご紹介することができました。
これ以上ないくらい豪華なメンバーにご協力いただいた秀英体100展、東京・大阪・福島の3会場を巡回し、明治からの100年間の歩みをご紹介しました。たくさんのご来場、誠にありがとうございました。100年作ってきた秀英体がどんな風に変化してきたか、そして2005年から取り組んできた平成の大改刻による書体が、24名+1組のグラフィックデザイナーによってポスターになり、みなさんに新しい魅力をお届け出来たこと、本当にうれしく思っています。
そして平成の大改刻はついにクライマックス! 新しい書体として秀英体の仲間入りをした角ゴシックと丸ゴシック、製品化に向けてあとひといき! 発売をお知らせできるタイミングになりましたら、改めて詳細をご報告いたします。
それでは2012年も辰のように上り調子の秀英体をよろしくお願い致します。
よいお年を!
(2011.12.27 佐々木)
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*1 修悦体:警備員の佐藤修悦さんが新宿駅の改良工事の警備を担当中、駅利用者にわかりやすく道案内するために開発した書体。ガムテープを駆使し、視認性の高い文字デザイン、細かいアールの表現、何より独特のバランス感覚で、新宿駅利用者に利便性のみならず癒しをもたらした名作書体。秀英体とデザインは全く異なりますが、読みが1字違いで勝手に親近感を抱いています。詳しくは上野経済新聞の佐藤修悦さんインタビュー
をご覧ください。
- *2 経師:壁全面を覆うようなグラフィック展示で活躍する方法。専用の用紙にグラフックを出力し、糊で壁に貼って施工します。秀英体展では書体の紹介などで大きな経師を多用しました。
- *3 ナベさん:gggの印刷物などでいつもお世話になっているプリンティングディレクターの渡辺謹二さん。秀英体展では告知ポスターだけでなく、新作ポスターの大半を手がけていただきました。
- *4 アルポリ:正式名称は「三菱樹脂アルポリック」で、看板や展示用のアートパネルに使用するアルミ複合版のこと。gggでも展示に使用することがあり、やや高価ですが、強度や高級感はピカイチです。
- *5 2枚作ってくれた人:新作ポスター、実は2枚組として製作したデザイナーさんが3名もいました。gggやCCGAで見た方も多いはず! 史上初のgggの2Fにあがる階段に展示されたのもこれです。現在は、新作ポスターの中からその季節に合った作品が1点、飾られていますので、gggに行ったら2Fに上がる階段も要チェックですよ!
- *6 暴れて欲しいな、秀英体には:杉浦康平さんによる秀英初号明朝評。大阪での特別講演会では秀英初号明朝をキーに、杉浦さんのデザインを解説していただきました。しかと心に刻みました。