秀英体のコネタ
2005年08月04日
第10回 東京国際ブックフェア2005で何が起こったか(2)
前回のコネタに引き続き、東京国際ブックフェア2005・DNPブースのもようをお届けします。
丸み出し・バッキングの工程の次は、表紙の製作です。
『秀英体研究』は「継ぎ表紙」といって、背と表紙の素材が異なっています(背には革を使いました)。先に背革に表紙の芯になる板紙を接着します。

背に表紙の板紙をくっつけています
板紙をくるむように表紙の紙を接着します。紙は板紙よりも大きめに作ってあるので、余りを内側に折り込むのですが(折りこんだあとは、後ほど見返しを貼るので見えなくなります)、折りの作業にまたしても渋い道具が登場します。

表紙の紙を折る道具「指輪」
竹でできた指輪で、その名も「指輪」です。このように指にはめて使います。竹がつやつやの飴色になっています。
ほんの少し前まで、植物からうまれた道具で本は作られていたんですね。昔の道具だから、というのは簡単ですが、わたしはとても温かみを感じます。これがプラスチックなら、飴色に育ったりはしません。

指にはめて使います
指輪とは別に、紙を折る道具はもうひとつあります。「竹べら」です。

竹べら
竹べらは表紙の紙を折るのではなく、普通の紙を折るための道具です。こちらも飴色で、やはり使っているうちに自然と形が変わっていきます。

こちらは普通の紙を折ります
中身と表紙ができました。それでは両者を接着し、一冊の本に仕上げます。
まずは背固めです。丸みをつけ、バッキングで耳を出した背を、ばらばらにならないように固める作業です。
『秀英体研究』では、いくつかある背固めの方法のうち「ホローバック」を採用しました。この方法は、背と中身を密着させず、ページを開くと背に空洞が生まれます。この空洞のおかげで、開きやすく、なおかつページが勝手にめくれたりしないのです。ホローバックの場合、層のように素材を重ねて背固めをおこないます。

ホローバック方式の背

背固めを待っている本たち。スピン(しおり)はもうはさんであります。
右のうっすらした白いものが「寒冷紗」、グレーの紙が「地券紙」、茶色の紙が「シワ紙」、先端がストライプの小さな布が「花布」です。これを順に貼っていきます。
背は中身を支え、寿命を決める重要な部分ですので、接着剤は膠を使います。

花布(はなぎれ)、地券紙、シワ紙、寒冷紗
まずは寒冷紗を貼ります。
その上に再び膠を塗り、背の両端(天地)に花布を貼ります。元々は綴じの補強のために付けられたそうですが、今は本を開くたびにちらりと見えるお洒落ポイントとして形だけ残っています。
スピンと花布がついていると、ぐんと「書籍」という雰囲気がしてきます。

花布を貼っている作業
寒冷紗の上からさらに膠を塗り、シワ紙を貼ります。シワ紙はその名の通り、しわしわした紙です。このひだのぶん、普通の平らな紙に比べ膠を多く抱え込むため、背の強度を高めてくれます。
そして地券紙を貼ります。地券紙にする紙はなんでもいいらしく、昔は新聞紙も使われていたそうです。

シワ紙
寒冷紗・シワ紙・地券紙を貼ったら、最後に「クーター」を重ねます。これはクラフト紙を背と同じ幅の筒状に丸めたもので、本の背と背革をつなぐ役割をします。クーターを使わない方法もありますが、『秀英体研究』は仕上がりサイズがB5版・700ページ以上ある本ですので、背にクーターを入れ、接着点を増やし、強度を高くします。
クーターを貼ったら、背固めの工程は完了です。

背固めが完了しました
次回は表紙くるみ、ミゾ付けをして本が完成です。
お楽しみに!
(2005.8.4 佐々木)